守屋山に黄金色の花が咲いた


「少女よ、少女よ。目をさますのじゃ。
こんな所でねていると、かぜをひくぞ。
わしはこの山に住んでいる明神じゃ。
今日はおまえに良いものをみせてあげよう。
わしの後をついておいで」
その声は、いつか聞いたことのある明神さまの声で
した。



少女は声のするほうにむかって歩いていきました。
どのくらい歩いたのでしょうか。
ふもとのひあたりの良い場所についた時、少女はあ
っとおどろきの声をあげました。
何百年もの間、おおぜいの人が探してもみつけるこ
とができなかった黄金色の花が、どて一面に咲いて
いるではありませんか。



それも一本や二本ではありません。
そこには百本、いや千本、二千本・・・、
数えきれないくらいの黄金色の花が咲いていたのです。
黄金色の花は、太陽にあたり、きらきらと輝いていま
した。
「なんてきれいな花だろう」
少女は黄金色の花にみとれていました。



すると、また声が聞こえました。
「少女よ、長い間、本当によくがんばったのー。
目の前の黄金色の花は、おまえが咲かせた花じゃ。
兄を思うやさしい気持が、この黄金色の花になったの
じゃ。この花はなんというか知っているか。
福寿草というのじゃ。
おまえが兄にやさしいことばをかけるたびに、一本ず
つここに咲いたのじゃ。
この黄金色の花は、誰にでも見える訳ではないぞ。
心のやさしい人にしか見えないのじゃ。



春になると、おおぜいの人が黄金色の花をさがしにや
ってくるが、誰の目にも見えないのじゃ。


    「守屋山に黄金色の花が咲いた」より




「守屋山に黄金色の花が咲いた」は、みほようこ
初めての童話集・「風の神様からのおくりもの」に
収録されています。



「風の神様からのおくりもの」は、2001年8月、
「鳥影社」から発行されました。







心を病む兄のために、明神様にお参りする心優し
い少女の話など4編。
信州諏訪を舞台に、美しい挿絵を添えて描かれる
心温まる創作童話。


    収録されている童話


 ・  明神さまの姿をみた少女

 ・  風の神様からのおくりもの

 ・  雪んこの舞

 ・  守屋山に黄金色の花が咲いた 




風の神様からのおくりもの―諏訪の童話

風の神様からのおくりもの―諏訪の童話