竜の姿をみた少女


     竜の姿をみた少女6


そんな春のある日。
かなは、一人でしらかば湖へ行きました。
そして、しらかばの木の下で、湖をながめていま
した。
すると・・・。
どこからか、小さな声が聞こえてきました。
「だれかしら?」
あたりをみまわしましたが、だれもいません。



耳をすませて聞いていると、こんな話し声が聞こ
えてきました。
「しらかばさん。・・・三郎さまは・・・今年も
・・・この湖へ・・・みえるかしら」
「ああ、みえるとも。・・・三郎さまは・・・こ
の村が・・・大好きだからね」
「三郎さまは・・・いつ・・・この湖へみえるか
しら」



「湖の氷も・・・とけ始めたし・・・ぼつぼつ・
・・みえるのではないかな」
「三郎さまが・・・早くみえるといいね。・・・
私、諏訪の話を・・・聞きたいわ」
しらかばといぬのふぐりの花が、話をしていたの
でしょうか。
「三郎さまって、だれのことかしら。竜になった
三郎のことかな」
かなは、そう思いました。


    つづく
 

「竜の姿をみた少女」は、みほようこの二冊目の
童話集・「竜神になった三郎」の続編。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)



湖につき落とされた三郎が、地の神に助けられ、心
のやさしさゆえに、竜神となる表題作ほか、守屋山
の明神様にまつわる、福寿草と少女の話を収録。
信州諏訪の風の神様から聞いた話をまとめた第2弾。


    ・  竜神になった三郎

    ・  福寿草になった少女



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