竜の姿をみた少女


竜の姿をみた少女10


「おじいさんは、なぜ兄さんたちにうらぎられたの」
「兄たちは、わしにやきもちをやいたのじゃ。
わしの妻は、村一番の・・・いや信州一の美しい人だ
った。姿が美しいだけでなく、心の清いやさしい人だ
った。その上、働き者だった。妻は、朝から晩までよ
く働いてくれた。料理も洗濯も掃除も、そうそう、は
たおりも上手だったよ。だから、兄たちは、わしがう
らやましかったのじゃろ」



「おじいさんは、兄さんたちにうらぎられた時、どう
したの」
「わしは、心から信じていた兄たちに、湖の深いふち
につき落とされた。びっくりしたけれど、わしは兄た
ちをうらんだり、にくんだりすることができなかった。

『あんなにひどいことをされたのに、おまえは少しも
兄たちをにくんでおらぬ。なぜじゃ』、わしを助けて
くれた神様は、そういったけれどね」
おじいさんは、湖へつき落とされた時の様子を、話し
てくれました。



「その人のことを、心から信じていれば、どんなにひ
どいことをされても、その人をうらんだり、にくんだ
りできないものだということを、わしはその時知った
のじゃ。その人のことを信じるということは、いい所
も悪い所も、すべて認めてあげるということなのだろ
うね」
おじいさんは、自分にいいきかせるようにいいました。


つづく



「竜の姿をみた少女」は、みほようこの二冊目の
童話集・「竜神になった三郎」の続編。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)




http://www.geocities.jp/dowakan/douwasyuu2.html


湖につき落とされた三郎が、地の神に助けられ、心
のやさしさゆえに、竜神となる表題作ほか、守屋山
の明神様にまつわる、福寿草と少女の話を収録。
信州諏訪の風の神様から聞いた話をまとめた第2弾。


    ・  竜神になった三郎

    ・  福寿草になった少女



http://www.bk1.co.jp/product/2434727