竜の姿をみた少女10
「おじいさんは、なぜ兄さんたちにうらぎられたの」
「兄たちは、わしにやきもちをやいたのじゃ。
わしの妻は、村一番の・・・いや信州一の美しい人だ
った。姿が美しいだけでなく、心の清いやさしい人だ
った。その上、働き者だった。妻は、朝から晩までよ
く働いてくれた。料理も洗濯も掃除も、そうそう、は
たおりも上手だったよ。だから、兄たちは、わしがう
らやましかったのじゃろ」
「おじいさんは、兄さんたちにうらぎられた時、どう
したの」
「わしは、心から信じていた兄たちに、湖の深いふち
につき落とされた。びっくりしたけれど、わしは兄た
ちをうらんだり、にくんだりすることができなかった。
『あんなにひどいことをされたのに、おまえは少しも
兄たちをにくんでおらぬ。なぜじゃ』、わしを助けて
くれた神様は、そういったけれどね」
おじいさんは、湖へつき落とされた時の様子を、話し
てくれました。
「その人のことを、心から信じていれば、どんなにひ
どいことをされても、その人をうらんだり、にくんだ
りできないものだということを、わしはその時知った
のじゃ。その人のことを信じるということは、いい所
も悪い所も、すべて認めてあげるということなのだろ
うね」
おじいさんは、自分にいいきかせるようにいいました。
つづく
「竜の姿をみた少女」は、みほようこの二冊目の
童話集・「竜神になった三郎」の続編。
- 作者: みほようこ,長野ひろかず
- 出版社/メーカー: 鳥影社
- 発売日: 2004/04
- メディア: 単行本
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http://www.geocities.jp/dowakan/douwasyuu2.html
湖につき落とされた三郎が、地の神に助けられ、心
のやさしさゆえに、竜神となる表題作ほか、守屋山
の明神様にまつわる、福寿草と少女の話を収録。
信州諏訪の風の神様から聞いた話をまとめた第2弾。
・ 竜神になった三郎
・ 福寿草になった少女