じいじとせみ


じいじとせみ5


ばあばが急いで病院へかけつけると、じい
じは真っ青な顔でベッドに横になっていま
した。
「ぼうやに、このせみをわたしておくれ」
そういって、じいじは、紙袋に入ったせみ
をわたしました。



こんな体になっても、まだぼうやと約束し
たことを守ろうとしているじいじ。
ばあばは、そんなじいじをいじらしく思い
ました。



「はい、はい。このせみをぼうやにわたし
ますよ。これは、じいじがとってくれたせ
みですよって」
じいじは、静かに目をとじました。
ばあばがきてくれて、ほっと安心したので
しょうか。
 

            つづく