ふしぎな鈴「じいちゃんとばあちゃん」の章3
「じいちゃん…」
かなは胸がつまり、何もいえませんでした。
「かなもこのせみのように、おかあさんの
おなかから、生まれてきたのだよ」
おじいさんがぽつりといいました。
おじいさんといっしょにみたせみの羽化は、
忘れられない思い出になりました。
おじいさんもおばあさんも、花や小鳥が好
きな心のやさしい人でした。
かなが五才の時。
おじいさんが病気でなくなりました。
脳こうそくでした。
かなは、人の死に初めてであいました。
温かだったおじいさんの体が、氷のように
冷たくなっていくのが信じられませんでし
た。
「じいちゃん、じいちゃん」
いくらよびかけても、おじいさんは何も返
事をしてくれません。
つづく
童話「じいちゃんとばあちゃん」は、
みほようこの三冊目の本、「ふしぎな鈴」
に収録されています。
「ふしぎな鈴」は、信州諏訪の「風の神様」
から聞いたお話。
「ふしぎな鈴」は、2005年9月、
「鳥影社」から発行されました。
ふしぎな鈴
http://www.geocities.jp/dowakan/douwasyuu3.html
http://www.bk1.jp/product/02593627