かきつばたになった少女


   かきつばたになった少女7


「おとうさま、ごめんなさい。私は
おとうさまとの約束をやぶり、一人
で霧ケ峰へきました。
病気のおばさまに、きすげの花をプ
レゼントしようと思ったのです。



おとうさま、どうか霧が早く晴れる
ように、私をしっかり守ってくださ
いね」
かきつばたは、心の中でおとうさん
にお願いしました。



どのくらいの時間が過ぎたのでしょ
うか。
かきつばたには、長い時間が過ぎた
ように感じました。
霧がさっと晴れ、目の前に、真っ青
な空があらわれました。



そして、広い草原のむこうから、こ
ちらにむかって、少年が走ってくる
のがみえました。
少年の姿は、草原を走っている小鹿
のように見えました。


           つづく



かきつばたになった少女」は、信州
の霧ケ峰高原に伝わっている「かきつ
ばた」の伝説をヒントにして、
みほようこが書いた物語。



童話「かきつばたになった少女」は、
みほようこの四冊目の童話集「ライ
オンめざめる」に収録されています。



童話集「ライオンめざめる」は、昨年
十月、「鳥影社」から発行されました。
信州諏訪の「風の神様」から聞いたお
話が、三つのっています。