笛の音よ、永久にひびけ


 「笛の音よ、永久にひびけ」より


一ヶ月後。
若者は、かえでの木が立っていた丘の
上で、コンサートを開きました。
協力してくれた村の人々や、かえでの
木が大好きだったこどもたちのために、
若者はかえでの笛でいろいろな曲を演
奏しました。



二百年もの間、村の人々を守ってくれ
たかえでの木の精が、その笛の中に宿
っているような、清らかな音色でした。
村の人々は、若者が奏でる清々しい笛
の音に、時間も忘れうっとりと聞きほ
れました。



こうして、切りたおされたかえでの木
は、一人の若者によって、コカリナと
よばれるすてきな笛に生まれかわりま
した。



若者は、村の人々が帰った後も、いつ
までもいつまでも笛をふき続けました。
笛の音は、遠くふもとの村までひびき
わたりました。



「若者よ、わしに新しい命を与えてく
れて、ありがとう。感謝しているぞー。
わしはうれしいのじゃ。
わしはこの村が大好きじゃ。だから、
このままずっとこの丘に住み続けるつ
もりじゃ」
楓の声が、どこからか聞こえてきまし
た。



  笛の音よ、永久にひびけ


http://www.geocities.jp/dowakan/raionhuenone1.html




童話「笛の音よ、永久にひびけ」は、
スキー大会の会場をつくるためにきり
たおされた、志賀高原の樹齢二百年の
楓のお話。



童話「笛の音よ、永久にひびけ」は、
みほようこの四冊目の童話集「ライオン
めざめる」に収録されています。



     童話集「ライオンめざめる」


http://www.geocities.jp/dowakan/douwasyuu4.html