きよと清太と、そして白駒


  きよと清太と、そして白駒17


一方、清太も、「清太や、清太や」と、
みんなからたよりにされ、かわいがら
れています。
「おじょうさまと清太は、ほんとに仲
がいいね。兄と妹みたい。いや、それ
以上かな?」
やしきで働いている人たちは、きよと
清太のことを、温かく見守っています。 



七月のある日。
きよが、馬小屋へやってきました。
「清太さん。ゆうすげの花って、みた
ことある?」 
「あるよ。一度だけ」
「どこでみたの?」
「何年か前、長者のおともで、夕方霧ケ
峰高原を通ったことがある。



その時、どこからかいい香りがしてきた。
何の香りだろうと近づいてみたら、レモ
ン色の美しい花が咲いていた。
それが、ゆうすげの花だったんだ。
きよちゃん。ゆうすげの花は、レモン色
の美しい花だよ。おら、もう一度、ゆう
すげの花がみたいな」
清太は、霧ケ峰高原で咲いていたゆうす
げの花を思い出しながらいいました。


             つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう悲しい伝説があります。


「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。



登場人物


・きよ  長者の一人娘

・清太  長者の家で働いている少年

・白駒  長者の家の馬