きよと清太と、そして白駒


  きよと清太と、そして白駒7


清太は、長者のお使いもします。
長者のおともで馬を走らせ、遠くの村
へでかけることもありました。



「長者さまは、いい息子さんがいて、
幸せじゃのぅ」
「いや、清太は、わしの息子ではない
のじゃ。わが家で働いている少年じゃ。
こんなすてきな息子がいたら、うれし
いのじゃが」
長者と清太は、なぜか親子にまちがわ
れました。



そんな清太にも、たった一つ、楽しみ
がありました。
白駒の背にきよをのせて、八ヶ岳のふ
もとの高原を、二人で走りまわること
でした。
きよと高原を走っている時、清太はと
ても幸せでした。



「さあ、おじょうさま。出発しよう」
 馬小屋へついた時、清太がうれしそ
うにいいました。
「清太さん。きよってよんで」
「おらが、おじょうさまのことを、ほ
んとにきよちゃんってよんでいいの?」
「いいわ。清太さん。二人だけの時は、
きよちゃんってよんでね」


             つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう悲しい伝説があります。


「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。



登場人物


・きよ  長者の一人娘

・清太  長者の家で働いている少年

・白駒 長者の家の馬