火とぼし山


   火とぼし山9


次郎の笑顔をみたとたん、きよは
疲れがいっぺんにふきとびました。
「次郎さん。この一週間、とても
長かったわ。時間が止まっている
のではないかと思ったくらい」
「おらも」
二人は、再会できたことを、心か
ら喜びました。



「はい、次郎さん。むすびよ」
「むすび?」
「次郎さんに食べてもらおうと思
って、持ってきたの。さあ、食べて」
きよは、次郎にむすびをわたしま
した。



「うまいっ」
「おいしいでしょ」
「うん、うまい。きよちゃん、中
に入っている梅ぼしも、おいしいね」


              つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。