火とぼし山


   火とぼし山51


そういえば、きよちゃんが持って
くるとっくりは、驚くほど熱い。
きよちゃんの手は、たしかに熱い
けれど、あのとっくりの熱さは異
常だ。
次郎の心の中で、きよに対する疑
いがどんどんふくらんでいきました。



その一方で、次郎は思いました。
おらは、小さな時から、きよちゃ
んが大好きだった。
そんなきよちゃんに、なぜ疑いの
気持をいだくのだろうか。



きよちゃんが、魔物であるはずは
ない。
小さな時から大好きだったきよち
ゃんに、疑いの気持をいだくなん
て、おらはどうかしている。


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。