火とぼし山


   火とぼし山56


きよがいうように、みよは次郎が
働いているたんぼや畑へ、何度も
やってきました。
次郎は、「会いにこないで」とい
えず、困っていました。
みよは、働いている家の主人の姪
だったからです。



「おらが好きなのは、きよちゃん
だけだよ」
次郎はそういったけれど、きよに
は次郎のことばが白々しく聞こえ
ました。



「次郎さんのうそつき。次郎さん
の心の中には、その人が住んでい
るのに、なぜそんなことをいうの」
きよは、心の中でさけびました。


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。