母の短歌73


藤浪の匂へる下を通り来し

   吾が目に眩し馬酔木の若葉



先生の「続一日詠集」が思ひ見ぬ

   遺歌集となりてしまひぬ



木曾見茶屋の峠に立てば若葉の谷と

   猫柳の綿毛舞ひ上がりくる



生き形見と笑ひくれたるエプロンをかけて

   友の葬りの手伝ひをする