火とぼし山


   月に一度の出会い 14


その夜。
「きよ。このごろ元気がないけれ
ど、どうしたんだい」
おとうさんが心配して聞きました。
「とうちゃん。なんでもないわ。心
配しないで」



「きよ。次郎君と、けんかでもした
のかい」
「とうちゃん。私たち、けんかは一
度もしたことはないわ。次郎さん
は、野良の仕事が忙しいの。だか
ら、会えないんだって」



「そうか。それならいいけれど。この
ごろ元気がないから、どうしたのか
なと心配していたのだよ。仕事がひ
まになれば、また会えるさ」
おとうさんは、きよをなぐさめました。



「とうちゃん。ごめんね。ほんとは、
仕事がひまになっても、次郎さんと
は月に一度しか会えないの。私、さ
みしい」
きよは、心の中でそっとつぶやきま
した。


          つづく