火とぼし山


    湖を泳ぐ娘 33


次郎は、「会いにこないで」と
いえず、困っていました。
みよは、働いている家の主人
の姪だったからです。



「おらが好きなのは、きよちゃ
んだけだよ」次郎はそういった
けれど、きよには次郎のことば
が白々しく聞こえました。



「次郎さんのうそつき。次郎さ
んの心の中には、その人が住
んでいるのに、なぜそんなこと
をいうの」
きよは、心の中でさけびました。


       つづく