火とぼし山


  新しい出発 23


「きよ。おまえは、大好きな次郎
に会いに行く途中、小坂観音沖
の深い淵で、おぼれてしまった
のじゃ」
「次郎さんて、誰」



「おまえが、この世で一番好き
な人じゃ」
きよは、大好きだった次郎のこ
ともおぼえていないようでした。



「私が、淵でおぼれたのですか」
「そうじゃ。大きなうずにまきこま
れ、おぼれてしまったのじゃ。
手長と足長が、うずの中からお
まえを助けてくれた。おまえは、
このやしきで、三日間眠り続け
たのじゃ」


       つづく