硫黄岳に咲いた黄金色の花

昨日につづき、「硫黄岳に咲いた黄金色の花」
を紹介します。


   「硫黄岳に咲いた黄金色の花4」
   

水の中に手をいれてみると、なんとあたたかな
湯でした。黄金色の花は、湯の花だったのです。
ふくと白駒は、あたたかな湯に手と足をひたし
ました。そして、黄金色の花びらで手と足をさ
すってみました。
すると、ふしぎなことに、疲れがいっぺんにと
れました。ふくは白駒の体を花びらでやさしく
さすってあげました。白駒もたちまち元気にな
りました。



「さあ、白駒。早く家にもどって、とうちゃん
をここへつれてきてください。おねがいします」
ふくは、白駒にお願いしました。
白駒は、ふくの家へもどりました。
そして、長者をのせ、あっという間にもどってき
ました。



「おお、これが黄金色の花か。美しい花だね」
長者は、驚きの声をあげました。
「とうちゃん、早く手と足を湯の中へ入れてごら
ん。体が楽になるよ」
長者は、手と足を湯の中へ入れました。
「うーん、気持がいい」
長者は、うっとりした顔でいいました。
しばらくすると、どす黒かった長者の顔が、うっ
すらとピンク色になりました。
「とうちゃん、きっと元気になれるよ」
「そうだな。元気になれるかもしれないね」
長者もうれしそうでした。



ふくは、長者の体を、湯にひたした黄金色の花び
らで、やさしくさすってやりました。
長者は、一日ごとに元気になっていきます。
そして、十日後には、すっかり元気になりました。
「さあ、ふく。家へもどろう」
「私は、ここにとどまるわ」
「なぜ?」
「私、八ヶ岳の女神さまとやくそくしたの。ここに
とどまって、病気で苦しんでいる人を助けるって」
「そうか、そんな約束をしたのか。約束は守らなく
てはいけないけれど、ふくがいないと、さみしいね」
長者はさみしそうでした。
長者は、白駒の背にのり、一人で家へもどっていき
ました。
ふくは、女神さまとの約束どおり、黄金色の花が咲
いているこの場所にとどまりました。


        つづく