硫黄岳に咲いた黄金色の花


昨日につづき、「硫黄岳に咲いた黄金色の花」
を紹介します。


   「硫黄岳に咲いた黄金色の花5」
   

その後。
白駒は、あちこちの村から、病気で苦しんでいる
人を、つれてきました。
一人が元気になると、どこからかまた次の病人を
つれてきました。足腰もたたない病人を、白駒が
どうやってつれてくるのか、ふくはふしぎに思い
ました。



ふくは、白駒がつれてきた人の体を、黄金色の花
びらで、毎日やさしくさすってあげます。
すると、死にそうだった人が、何日かするとすっ
かり元気になりました。
ある日、ふくは白駒にききました。
「白駒、病気でぐったりしている人を、どうやっ
てここへつれてくるの?」
「女神さまのいいつけで、その人の家へ行くと、
女神さまが私のせなかに病人をのせてくれるので
す」
「でも、どうやって、ここへつれてくる病人を選
ぶの?」
「女神さまは、神さまを信じている、心のやさし
い人を選んでここへつれてくるようですよ」




 一本しかなかった黄金色の花も、今では十数本
にふえました。
「ふくちゃんのおかげで、おらはこんなに元気に
なれた。ありがたいことじゃ。ふくちゃん、あり
がとう」
元気になった人々は、ふくに感謝しました。何百
人もの人が、黄金色の湯の花で元気になりました。
ふくも、病気で苦しんでいる人をたすけることに
いきがいを感じています。



食べ物は、白駒が運んでくれます。食べ物といっ
ても、小さな赤い木の実だけ。その木の実を口に
すると、なぜかすぐにおなかがいっぱいになりま
した。
「白駒。これ、何の木の実?」
「女神さまも、毎日この木の実を食べていますよ。
でも、名前はしりません」
白駒がいいました。


 
それから、十年がすぎました。
硫黄岳での生活は、夏は涼しく快適でした。
でも、冬は寒さがきびしく、雪が何メートルも積
もります。そして、その雪は五月頃までとけませ
ん。半年間は、毎日白い雪をみてくらさなくては
なりません。


        つづく