童話「白駒の池」


「白駒の池」10


ある日、とうちゃんが、山深い湖の近くを通ったら、
生まれたばかりの白い馬が、足にけがをしてたおれ
ていたんだって。湖の近くには一軒も家がなかった
ので、とうちゃんはその馬を家へつれてきたの。生
まれたばかりのそれはかわいい馬だったわ。それか
ら、ずっと白駒はわが家にいるの。ねえ、白駒。そ
うよね?」
きよは、白駒がわが家にきた時のことを思い出しな
がらいいました。



「そうだったのか・・・」
「清太さん、そうだったのかって、どういう意味?」
「いやー、こんなことを、きよちゃんに話しちゃって
いいのかな?」
清太は、なぜか話すのをためらっています。
「なんでも話して。ねえ、清太さん」
「白駒。きよちゃんに話をしていいかな?」
「いいよ」というように、白駒は「ひひーん」と鳴
きました。



「おらが、長者の家へきて、十日くらいたったころ、
夜馬小屋をのぞいたら、白駒がいなかったんだ。おら
はびっくりして、ひっしで白駒をさがしてあるいた。
そうしたら、一時間くらいしたら、なにくわぬ顔で白
駒がもどってきたんだ。長者のじまんの馬が、このま
ま帰ってこなかったらどうしようと、おれ心配でたま
らなかった」
清太は、ぽつりぽつりと話しはじめました。



「実は・・・その後も何度か、白駒が馬小屋にいない
時があった。朝にはちゃんと馬小屋にもどってきてい
たので、誰にも話したことはなかったのだけれどね」


                         つづく



      童話「白駒の池」について


信州の佐久地方には、「白駒の池」という美しい湖が
あります。その湖には、悲しい話が伝わっています。
悲しいお話とは・・・? 
童話「白駒の池」は、「白駒の池」の伝説をヒントに
して、みほようこが書いた物語。



     初めて読んでくださったかたのために 


   白駒の池 1

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060819



    その2

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060820



    その3

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060821



    その4

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060822



    その5

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060823



その6

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060824




その7

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060825



その8

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060826



その9

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060827