かきつばたになった少女


    かきつばたになった少女9


「少女の頃、私は霧が峰で人間の少年に会ったの。
そして、その少年と何度か会ううちに、おたがい
に好きになったわ。でも・・・今もそうだけれど、
人間の男性と女神は、結婚することは許されてい
なかったの。だから、私はその人と結婚すること
をあきらめたわ。でも・・・私はその人のことを
どうしても忘れることができなかった。だから、
誰とも結婚しなかったの。その人は、その後おさ
ななじみの人と結婚したわ。そして、生まれたの
が山彦。だから、山彦のことは、ずっと気になっ
ていたわ」



「そうだったのね。私何も知らなかった」
「この話は、今まで誰にもしたことがないの。あ
なたのおとうさまにもね。この話は、二人だけの
ひみつよ」
「おばさま、私はだれにもいわないわ。もちろん
おとうさまにも・・・」
おばさまは、若い頃の思い出をかきつばたに話し、
すっきりしたようでした。そして、きすげの花を
みたおばさまは、少し元気になりました。



その後。
かきつばたは、何度か霧が峰へ行きました。「お
ばさまに、きすげの花・・・」をという気持もあ
りましたが、「もう一度山彦に会いたい」という
気持が強かったのです。
しかし、山彦には会えませんでした。


     つづく



「かきつばたになった少女」は、みほようこの四
冊目の童話集・「ライオンめざめる」に収録され
ています。


「ライオンめざめる」は、十月七日、「鳥影社」
から発行されました。



http://www.choeisha.com/



http://www.geocities.jp/dowakan/douwasyuu4.html



ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))

ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))