竜神になった三郎3
十数年が過ぎました。
大人になった兄たちは、それぞれに妻をめとり、
平凡に暮らしています。
三郎も、ニ十四才になりました。
りりしい青年になった三郎は、村の娘たちから
「三郎さん、三郎さん」と、したわれています。
「わし、三郎さの嫁さんになりたいな」
「私もよ。だって、三郎さんって、やさしいん
だもん」
「だめよ。わしがなるんだから」
村の娘たちは、三郎が大好きでした。
三郎は、年寄りからも「三郎さ、三郎さ」とたよ
りにされています。
ななかまどの実が橙色になった、秋のある日。
三郎は、遠くの町へ用たしにでかけました。
その町には、大きな美しい湖、諏訪湖があります。
三郎は、久しぶりに諏訪湖によってみました。
魚でもとっているのでしょうか。
湖には、小さな舟がいくつかういています。
「なんてきれいだろう」
秋の日をあび、湖はきらっきらっと輝いていました。
三郎がぼんやり湖をながめていると、
「何をみていらっしゃるの」
後でかわいい声がしました。
三郎が後をふりむくと、はっとするほど美しい娘が
立っていました。
つづく
「竜神になった三郎」は、みほようこの二冊目の童話集・
「竜神になった三郎」に収録されています。
- 作者: みほようこ,長野ひろかず
- 出版社/メーカー: 鳥影社
- 発売日: 2004/04
- メディア: 単行本
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