竜神になった三郎


    竜神になった三郎3


十数年が過ぎました。
大人になった兄たちは、それぞれに妻をめとり、
平凡に暮らしています。
三郎も、ニ十四才になりました。
りりしい青年になった三郎は、村の娘たちから
「三郎さん、三郎さん」と、したわれています。



「わし、三郎さの嫁さんになりたいな」
「私もよ。だって、三郎さんって、やさしいん
だもん」
「だめよ。わしがなるんだから」
村の娘たちは、三郎が大好きでした。
三郎は、年寄りからも「三郎さ、三郎さ」とたよ
りにされています。



ななかまどの実が橙色になった、秋のある日。
三郎は、遠くの町へ用たしにでかけました。
その町には、大きな美しい湖、諏訪湖があります。
三郎は、久しぶりに諏訪湖によってみました。
魚でもとっているのでしょうか。
湖には、小さな舟がいくつかういています。
「なんてきれいだろう」
秋の日をあび、湖はきらっきらっと輝いていました。



三郎がぼんやり湖をながめていると、
「何をみていらっしゃるの」
後でかわいい声がしました。
三郎が後をふりむくと、はっとするほど美しい娘が
立っていました。


つづく



竜神になった三郎」は、みほようこの二冊目の童話集・
竜神になった三郎」に収録されています。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

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