きよと清太と、そして白駒


 きよと清太と、そして白駒29


こんなきよをみたことがなかったので、
清太はびっくりしました。
「おれ、何かきよちゃんの気にさわる
ようなことをいったかな」
清太は、心の中でそっとつぶやきまし
た。



「私は、貧乏でもいい。体の丈夫な、心
の美しい、自分の考えをしっかりもっ
た人と結婚したい。
そりゃあ、お金はあったほうがいいけ
れど、二人でまじめに働けば、食べて
いけると思うの」
「・・・・・」



「私、次郎さんとは結婚したくない。
次郎さんが、わが家をついでくれると
いうなら、私はよそへとついでも良い
と思っているわ」
清太は、何もいえず、きよの話をだま
って聞いていました。



きよちゃんが結婚してしまえば、もう
「きよちゃん」なんてきやすく声をか
けることもできないし、こうして二人
で馬を走らせることもないのだなと思
うと、清太はさみしく思いました。


              つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう美しい湖があります。
その湖には、「白駒の池」という悲し
い伝説があります。



「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。