きよと清太と、そして白駒


  きよと清太と、そして白駒37


「そうか」
長者は、二人が、兄と妹のように仲良
くしていることは知っていました。
しかし、清太と結婚したいと考えてい
るとは、夢にも思っていませんでした。



「とうちゃんは、いつも清太さんのこ
とをほめているのに、なぜ反対するの?」
「きよ。わが家は旧家。しかも庄屋の
家柄。あまりにも家柄がちがいすぎる」
「とうちゃん。家柄って、そんなに大
事なの?」



「家柄は、大事だ。幼い時から、同じ
ような環境で育ったものなら、結婚し
てもうまくやっていける。
でも、育った環境が違うと、うまくや
っていけないのだよ」



「とうちゃんは、家柄が大事だという
けれど、私は長者の娘として生まれ、
清太さんはたまたま貧しい家に生まれ
たというだけのことではないの。
とうちゃんは、私が貧しい家の娘だっ
たら、息子とつきあうのを反対するの?」
長者は、何もいえませんでした。


              つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう美しい湖があります。
その湖には、「白駒の池」という悲し
い伝説があります。



「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。