きよと清太と、そして白駒


  きよと清太と、そして白駒30


「おらは、きよちゃんが大好きだ。
次郎さんにも、だれにも、きよちゃん
をわたしたくない。
きよちゃんは、おらのものだ!!」
清太は、心の中で強くさけびました。



おらが、家柄の良い家に生まれていた
ら、おらの家が金もちだったら、今き
よちゃんにプロポーズできるのに。
でも、おらの家は、貧しい。食べてい
くのが、精一杯だ。



だから、何不自由なく育ったきよちゃ
んを、おらは幸せにしてあげることが
できない。第一、家柄がちがいすぎる。
清太の心は、ゆれました。



「おらは、きよちゃんが大好きだ」
きよちゃんにこういえたらどんなにい
いだろうと、清太は思いました。
二人は、無言のまま、ゆうすげのつぼ
みをみていました。



「きよちゃんは、おらのことを、どう
思っているのだろうか」
清太は、きよの顔をそっとみました。
一方、きよも、「私は、清太さんが大好
き。清太さんは、私のことをどう思って
いるのかしら」と、心の中で問いかけて
いたのです。


              つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう美しい湖があります。
その湖には、「白駒の池」という悲し
い伝説があります。



「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。