火とぼし山


   火とぼし山14


「みしっ」
「ばりっ」
娘が歩くたびに、氷の割れる音が
します。
「あぶない」
「そっちへ行ってはだめ」
明神さまは、はらはらしながら、
娘の後をついていきました。



「娘よ。なぜ湖の氷の上を歩くの
じゃ。湖の氷は、まだ薄い。
湖に落ちれば、死んでしまうぞ」
明神さんは、心の中で娘に話しか
けました。
無事に湖をわたりおえた娘は、山
に向かって歩き始めました。



「次郎さん、こんばんは。会いた
かったわ」
「きよちゃん。今夜はずいぶん早
かったね」
「私、湖の氷の上を歩いてきたの」
「えっ、氷の上を?」
次郎が驚いて聞きました。


             つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。