井戸で鳴く黄金色のにわとり


 井戸で鳴く黄金色のにわとり20


城にいた人々は、急いで旅の用意
をしました。
「さあ、城を脱出するぞ。みんな
で故郷の甲斐にもどるのじゃ」
そうさけぶと、信廉はみずから城
に火をつけました。



暗闇の中で、城がほのおをあげめ
らめらと燃えています。
姫もにわとりをだき、おつきの人
と一緒に城をぬけだしました。



「武田の軍勢が、城をぬけだしたぞー。
すぐ後をおえー」
信忠の声で、兵士たちが武田の軍
の後を追いました。



「姫さま、さあ早く。だいじょう
ぶですか」
「私は、だいじょうぶ。みなさん
は、私にかまわず逃げて。
一人でも多く助かってほしいの。
今までいろいろお世話になりまし
た。ありがとう」
姫は、そういって頭をさげました。


           つづく



「井戸で鳴く黄金色のにわとり」は、
信州の伊那谷にあった「大島城」に
伝わっている話をヒントにして、
みほようこが書いた物語。