竹取物語


阿倍の右大臣と火鼠の皮衣 10


「ああ、よかった。これで、安倍
さまと結婚しなくてもいい」
かぐや姫が、笑いながらいいま
した。
そして、安倍が詠んだ歌に返歌
をし、箱に入れて返しました。



  名残なく燃ゆと知りせば皮衣

  思ひのほかにおきて見ましを



安倍は、何もいえず家へ帰りました。



人々は、「安倍の大臣が、火鼠の
皮衣を持って、かぐや姫の家に行
ったというが、二人は結婚したのか。
大臣は、かぐや姫の家にいるのか」
と聞きました。



ある人は、「火鼠の皮衣を火にく
べたら、めらめらと燃えてしまっ
たとのこと。だから、かぐや姫
は結婚しなかったようですよ」と
いいました。



人々は、安倍の火鼠の皮衣の
話を聞いてから、「安倍」にちな
んで、「あへなし」というようにな
りました。


        つづく