火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 54


次郎の見合い 14


「次郎よ。わしが、きよとおまえの姿をみた
のは、諏訪湖に氷がはっている頃だった。あ
れからまだ何ヶ月もたっていない。それなの
に、これは一体どういうことなのじゃ。次郎、
おまえのことをいちずに思っているきよのこ
とを、忘れてはならないぞ。おまえのことを、
あんなに思ってくれるおなごは、ほかにいな
いからのぅ」
明神さまは、心の中で次郎に話しかけました。


「きよと次郎は、これからどうなるのだろう。
若い二人が離れて暮らしていると、いつしか
心まで離れてしまうのだろうか」
明神さまは、心の中でそっとつぶやきました。


        つづく