火とぼし山


   次郎の見合い 10


「まだ決めていない」
「じゃあ、私ともつきあって。ね、
いいでしょ。次郎さん」
二人の話を聞いていた明神さま
は、「やはり、こういうことだった
のか」と思いました。
きよがさみしそうだったわけが、
よくわかりました。



「次郎よ。わしが、きよとおまえの
姿をみたのは、諏訪湖に氷がはっ
ている頃だった。あれからまだ何
ヶ月もたっていない。それなのに、
これは一体どういうことなのじゃ。
次郎、おまえのことをいちずに思っ
ているきよのことを、忘れてはなら
ないぞ。



         つづく