開善寺の早梅の精

[童話]開善寺の早梅の精


開善寺の早梅の精 9


「いやいや、おはずかしい」
文次は、女の人にほめられ、顔が赤くなり
した。
「ところで、文次さん。なぜここへみえた
のですか」
「わしらは、今、甲斐の武田と戦っている。
だが、開善寺の早梅がみたくなって、こっ
そり戦場をぬけだしてきたのじゃ」


「まあ・・・こっそりぬけだしてきたので
すか。みつかったら大変でしょうに」
「今ごろ、文次がいないがどうしたと、さ
わいでいるでしょうな」
「文次さんて、おもしろいかたですね。さ
むらいではないみたい」
梅香となのる女の人は、そういって笑いま
した。


        つづく