開善寺の早梅の精

[童話]開善寺の早梅の精


開善寺の早梅の精 14


   袖の上に落ちて匂へる梅の花
   梢に消ゆる夢かとぞ思ふ


「袖に落ちた梅の花は、夢の中でちぎった女
性のようだ」という意味の歌をよんだ文次は、
眠くなってねてしまいました。
女の人は、文次の寝姿をじっとみていました。


   しきたへの手枕の野の梅ならば
   寝ての朝けの袖に匂はむ


女の人は、「ちぎりをかわす相手が梅の花なら
ば、翌朝はとてもよい香りが残っているでしょ
う」とよんだのでしょうね。
女の人は歌をよむと、静かに奥へ消えていきま
した。


        つづく