開善寺の早梅の精

[童話]開善寺の早梅の精


開善寺の早梅の精 7


「うわさ通り、美しい花じゃのぅ。香りも
すばらしい」
文次は、女の人に話しかけました。
すると、女の人は、にっこりほほえみました。


文次は、即興で歌をよみました。


  ひびきゆく鐘の声さへ匂ふらん
  梅咲く寺の入り相の鐘


「この寺では、鐘の音までも、梅の香りに
満ちている」、こんな意味の歌でした。

 
すると、女の人は軽く会釈をして、歌を返
してきました。


  ながむれば知らぬ昔の匂ひまで

  おもかげ残る庭の梅が枝


          つづく