黄金色のまゆ玉5


昨日につづき、童話「黄金色のまゆ玉5」
を紹介します。



    黄金色のまゆ玉5


明神さまは、奥さんと約束しました。
「あなた、約束を破ってはだめよ」
「わかった。わかった」
明神さまは、いいいました。
「でも・・・あのかたは、もう一つ黄金色の
まゆ玉がほしくなって、私にまゆ玉をかして
くれないのではないかしら」
奥さんは、なぜかそう思いました。
女のかんです。



そんなある日。
ひさしぶりに、遠くの国から友だちが訪ねて
きました。友だちには、こどもが一人います。
そのこどもが、重い病気にかかり、今にもし
にそうでした。
「明神や、おまえに頼みたいことがある。聞
いてくれるか」
「頼みたいことって、なんじゃ」



「明神よ、わしのこどもを助けてほしい。お
まえが持っている黄金色のまゆ玉を手にする
と、どんな病気でもなおるというではないか。
そろそろ次のまゆ玉が授かる頃だね。次のま
ゆ玉が授かったら、そのまゆ玉を、しばらく
わしのこどもにかしてほしい。なあ、頼む。
明神」
「そういわれてもな。実は、次のまゆ玉が授
かったら、妻にかしてあげると約束してしま
ったのじゃ」



「そのまゆ玉を、ゆずってくれといっている
わけではない。こどもの病気がなおるまで、
かしてほしいとお願いしているのだ。
な、頼む。このとおりだ」
友だちは、何度も何度も頭をさげ、明神さま
にお願いしました。
明神さまは困ってしまいました。



「じゃあ、こどもの病気がなおったら、すぐ
まゆ玉を返しておくれよ」
「もちろん。こどもが元気になったら、すぐ
まゆ玉を返すよ」
近いうちにまゆ玉をかしてもらえることにな
った友だちは、うれしそうに家へ帰っていき
ました。



それから、しばらくして、明神さまは二つ目
の黄金色のまゆ玉を授かりました。
でも、明神さまの心は、複雑でした。
「次のまゆ玉を授かったら、まゆ玉をかして
あげる」と奥さんと約束をしていたし、友だ
ちにもまゆ玉をかしてあげると約束していた
からです。



ある日。
明神さまは、おそるおそる奥さんに話しました。
「なあ、妻よ。約束しておいて悪いけれど、
黄金色のまゆ玉を、わしの友だちにしばらく
かしてあげてくれないか」と。



       つづく