ライオンめざめる5


昨日につづき、童話「ライオンめざめる」
を紹介します。



     ライオンめざめる5



みると、松虫草の花が、何事もなかった
かのように、風でゆれています。
「いたいよぉー・・・いたいよ・・・」
ライオンが、またないています。
かなは、いつものように、ロケットをや
さしくなでてあげました。



「うー、わん、わん」
とつぜん、りゅうが大声でほえました。
びっくりしてふりむくと、杖をついた白
いひげのおじいさんが、後にたっていま
した。
「どうしたのじゃ」
おじいさんが、にこにこしながら近づい
てきました。
「おじいさん、このライオンね、時々うー
んうーんってうなるの。なぜうなるのか
しら」
かなは、おじいさんに聞きました。



「そうか、ちょっとわしにみせてごらん」
おじいさんはロケットを手にのせ、じっ
とみています。
おじいさんがロケットをやさくしなでた時、
ふしぎなことがおこりました。
おじいさんの手の中で、ライオンがだんだ
んに大きくなってきたのです。二センチく
らいだったライオンが、十センチくらいに
なり、二十センチくらいの大きさになりま
した。



おじいさんは、ライオンをそっと地面にお
ろしました。
すると、ライオンは足をふんばり、しっか
り立ち上がりました。
そして、あっという間に、五十センチくら
いの大きさのライオンになりました。
りゅうはわんわんなきながら、ライオンの
まわりを走りまわっています。
しばらくすると、ライオンはふつうの大き
さになりました。
「うおー」



ライオンが、うれしそうな声をあげました。
「かなさん、ありがとう。やさしいかなさ
んのおかげで、私は長いねむりからさめる
ことができました」
ライオンは、うれしそうにいいました。
かなはびっくりして、大きくなったライオ
ンをみています。



「少女よ、わしは諏訪の神・明神じゃ。
おまえは本当に心の優しい少女じゃのぅ。
わしは諏訪の地をあちこちみて歩いている
ので、おまえのことも、りゅうのことも、
よーく知っているぞ。おまえは何千年もの
間誰も聞くことができなかったライオンの
声を、よく聞くことができたねぇ」


         つづく



童話「ライオンめざめる」は、今年
http://www.choeisha.com/
から、「風の神様からのおくりもの4」と
とて発行されます。



 今までに発行されたみほようこの本

「風の神様からのおくりものシリーズ1−3」



     風の神様からのおくりもの―諏訪の童話



      
     竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)




     ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)