童話「白駒の池」


      「白駒の池」22


「清太。今日、一日だけだぞ。明日の朝になったら、
この家をでていってほしい。きよには、何もいわず
にでていっておくれ。わかったな、清太」
「はい、わかりました」
清太は、心ならずもそういいました。



「おらは、きよちゃんと結婚することができるよう
な家に生まれたかった!!そして、大好きなきよち
ゃんと結婚したかった!!」
清太は、心の中でそっとつぶやきました。
「清太。今までよく働いてくれたね。ありがとう。
これは、私の気持だ。これだけあれば、三ヵ月くら
いは暮らせるだろう。その間に、次の仕事をみつけ
なさい。清太なら、きっと良い仕事がみつかるだろう」
そういって、長者は清太にお金をわたしました。



「ありがとうございます。この八年間、長者さまに
は、実のこどものようにかわいがっていただきあり
がとうございました。私は幸せ者です。長者さまは
じめ、この家のかたたちに親切にしていただいたこ
とは、一生わすれません。どうか、きよさんに、清
太は幸せでしたとおつたえください。おねがいします」
「清太、元気でくらすのだよ」
長者は、なごりおしそうにいいました。



「おれは、きよも清太も、どちらもてばなしたくな
い。二人とも、いつまでも自分のそばにいてほしい」
長者は、心の中でさけびました。
「自分にもう少し勇気があったら、使用人の清太とわ
が娘を結婚させてあげられるのに・・・。きよ、そし
て清太。勇気のない私をどうか許してほしい」
長者は、心の中で二人にわびました。


             つづく