かきつばたになった少女7
「霧が峰へ行くと、えものを追って走っている、足
の早い少年がいる。色は黒いけれど、とてもりりし
い少年だ」と。
かきつばたも「いつか山彦に会いたいな」と思って
いました。
かきつばたは、人間の少年を、遠くからみたことは
ありますが、話をするのは今日が初めてでした。
「色は黒いけれど、山彦さんて素敵なかたね。おと
もだちになりたいわ」
かきつばたは、心の中でそっとつぶやきました。
二人とも、今日初めて会ったのに、いつかどこかで
会ったことがあるような、とてもなつかしい気がし
ました。
「かきつばたさん、霧が峰へ何しにきたの?」
「病気のおばさまに、きすげの花をプレゼントしよ
うと思って、花をつみにきたのよ」
「かきつばたさんって、やさしいんだね」
「おばさまは病気なの。それにもう長くは生きられ
ないわ。だから、おばさまの最後の願いを聞いてあ
げたいと思って、だれにも行き先をつけず、きすげ
の花をとりにきたのよ」
「じゃあ、みんなが心配しているかもしれないよ。
早く帰ったほうがいいよ」
つづく
「かきつばたになった少女」は、みほようこの四
冊目の童話集・「ライオンめざめる」に収録され
ています。
「ライオンめざめる」は、十月七日、「鳥影社」
から発行されました。
鳥影社 新刊情報
http://www.choeisha.com/sinkan.htm
ヤフーブックス・楽天・アマゾン・ライブドア・
紀伊国屋書店・ジュンク堂など、インターネット
書店でも、注文できます。
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ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))
- 作者: みほようこ,長野ひろかず
- 出版社/メーカー: 鳥影社
- 発売日: 2006/10
- メディア: 単行本
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