火とぼし山


   火とぼし山48


その後。
きよが、次郎の所へたどりつく時
間が、だんだんに早くなりました。
会うたびに、十分二十分と、早く
なっていったのです。
「きよちゃん。今夜は、ずいぶん
早かったね。いつもより早く家を
でたの」
ふしぎに思い、次郎が聞きました。



「いつもと同じ時間よ」
きよは、そういいました。
でも、いつもと同じ時間であるは
ずがない。きよちゃんは、いつも
より早く家をでたのだろうと、次
郎は思いました。



「きよちゃん。どうやったら、こ
んなに早くここへこられるの」
「私、次郎さんと会う日には、無
事に次郎さんの所へたどりつけま
すように。一分でも早く、次郎さ
んに会えますようにと、心の中で
祈るの」


            つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。