笛の音よ、永久にひびけ


   笛の音よ、永久にひびけ1


志賀高原の丘の上に、大きな”いた
やかえで”の木が立っています。



「あーあ、よく寝たのぅ。
さて、ぼつぼつ目をさますとするか」
二百才になったかえでは、大きなあ
くびをしました。
そして、芽をだす準備をはじめま
した。



「ほーほけきょ、ホーホケキョ」
四月になると、森へうぐいすがやっ
てきます。
「かえでのおじさん、元気?」
「ああ、元気だよ。うぐいす君、
君は良い声だね」
かえでは、うぐいすがくるのを、
楽しみにして待っています。



「かっこう、かっこう」
五月なかばになると、かっこうが
やってきます。
かっこうの元気な声が、森にひび
きわたります。


          つづく



「笛の音よ、永久にひびけ」は、
スキー大会の会場をつくるために
きりたおされた、信州の志賀高原
の樹令200年の楓のお話。



童話「笛の音よ、永久にひびけ」は、
みほようこの四冊目の童話集・
「ライオンめざめる」に収録され
ています。