愛犬「りゅう」 ばいばい、またね


 愛犬「りゅう」 ばいばい、またね 3


「先生が・・・というより、奥さん
犬をかいたいんだって。奥さんはお茶
を教えているそうよ」
「お茶って、何だろう?」
ぼくは、かあちゃんのおなかの中で、そ
っとつぶやいた。



ぼく、その家へ行きたいな。でも・・・お
茶の先生だっていうから、「おすわり」
「待て」「ふせ」なんて、きびしいこと
をいわれるんだろうな。まあ、いいか。
その家にはこどもがいないというから、
ぼくをかわいがってくれるだろう。でも、
その奥さん、ぼくのこと気にいってくれ
るかな。



昭和五十九年十月三十一日。
ぼくは、この世に生まれた。
ぼくと一緒に、弟と妹も生まれた。
「あっ、可愛い犬。この犬を、先生に
あげよう」
少女はそういって、ぼくをだきあげた。


         つづく



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