火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 56


湖を泳ぐ娘 2


月あかりに照らされてみえたもの、それは
湖を泳いでいる娘の姿でした。
娘は、頭に荷物をのせ泳いでいます。
「どこの娘じゃろ」
近づいてみると、きよでした。


「誰かと思ったら、きよか。湖に氷がはれ
ば、氷の上を歩く。水がぬるめば、湖を泳
いで渡る。ほんとにむてっぽうな娘じゃのぅ。
大の男だって、湖を泳いで渡る人は、数え
るほどしかいない。それなのに、かよわい
おなごが、こんな夜中に、湖を泳いで渡る
なんて信じられん」
足長が、あきれたようにいいました。


         つづく