鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま


鹿になった観音さま 11


「いません。多分いないと思います。わしも、
初めてみました。その鹿は、美しい黄金色の
鹿でした。しかも、びっくりするような大き
な鹿。その鹿が、突然わしにおそいかかって
きたのです。わしは、その鹿を、弓でいとめ
ました」


「三郎さ、そのいとめた鹿は、どうしたのじゃ」
「和尚さま。その鹿は・・・」
「どうした。三郎さ」
「目の前から、姿が消えてしまったのです」
「何? いとめた鹿が、消えてしまったと。三
郎さ、夢でもみていたのではないのか」
和尚がいいました。
「いいえ、和尚さま。夢なんかみていません」
三郎が、きっぱりいいました。


         つづく