鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま


鹿になった観音さま 16


「観音さま。身の危険を感じたとはいえ、わし
は観音さまの化身である鹿に矢をむけてしまい
ました。どうか、わしをお許しください。今ま
で、わしは、たくさんの鹿を殺しました。なん
て罪深いことをしていたのでしょう。今日限り、
鹿狩りをやめます。弓をひくこともやめます。
観音さま、どうかわしをお許しくださいませ」
三郎は、観音さまの前で許しをこいました。


「さあ、三郎さ。石になってしまったタケルと
チハヤを、裏山へ迎えにいこう」
和尚と三郎は、裏山へいそぎました。
「三郎さ。タケルとチハヤは、どこじゃ」
「和尚さま、ここです」
大きな杉の木の根元に、犬の形をした二つの石
がころがっていました。


        つづく