女神さまとの約束


   女神さまとの約束 1


昔、むかし、ずぅーと昔。
八ヶ岳のふもとの高原には、おおぜいの女神
さまたちが住んでいました。
八ヶ岳には、黄金のように光る美しい花が
咲いている」
そんなうわさが、ふもとの村に流れていまし
た。
よし、おらが黄金色の花をみつけてやる」
そういって、夏になると、村の青年たちは、
八ヶ岳へ登りました。
でも、黄金色の花をみつけることはできませ
んでした。




一方、女神さまたちも、心の清いやさしい少
女を探していました。
しかし、女神さまの目にかなう少女は、なか
なかみつかりませんでした。




八ヶ岳のふもと、中山峠の近くに、さいのか
わらという山深い部落があります。その部落
は、茅野から佐久へぬける道すじにありました。
部落には、長者やしきとよばれる大きな家が
あり、長者と娘が仲良く暮らしています。
娘の名前は、福。
姿の美しい、心のやさしい少女でした。
早くに母をなくした福は、食事のしたくや掃
除など、家の手伝いをよくやりました。
「福ちゃんは、家の手伝いをよくやるね。え
らいね」
村の人々は、そういって、福をほめました。




大雪が降った夜。
「とんとん、とんとん」
玄関の戸をたたく音がしました。
「夜遅く、誰だろう?しかも、こんな大雪の
日に・・・」
長者と福は、おもわず顔をみあわせました。
「どなたかな?」
長者が、声をかけました。




すると・・・。 
「旅の者です。今晩一晩泊めていただけな
いでしょうか」
戸をあけると、貧しいみなりをした、若い
女の人が立っていました。
その人は、雪でびっしょりぬれ、ぶるぶる
ふるえています。
「寒かったでしょ。さあ、早く中へはいり
なさい」
「ありがとうございます。本当に助かります」
女の人は、うれしそうでした。
福は、いそいであたたかな食事と、風呂を用
意しました。
女の人はぐっすり休み、次の朝にはすっかり
元気になりました。
そして、何度も礼をいい、やしきをさってい
きました。


      つづく