[童話校長先生との別れ


  「校長先生との別れ」の章


三月のある朝。
「かな、ちょっと」
校長先生が、かなをよんでいます。



「校長先生、なあに?」
「かなとも、もうすぐお別れだね」
「お別れって?先生、どこかへ行くの」
「この学校を退職して、郷里へ帰るのだよ」
「先生の郷里って、どこなの」
「諏訪だよ」
「諏訪って、御柱祭で有名な諏訪大社諏訪湖
がある所でしょ」
「そうだよ。さみしくなってしまうね。
かな、いつでも諏訪へ遊びにおいで。
諏訪を案内してあげるから」
校長先生はいいました。



父のいないかなにとって、校長先生はおとうさ
んのような存在でした。
かなは、困ったことがあると、校長先生になん
でも相談していたのです。
校長先生は、前世でかなが自分の娘だったことを
知っているので、かなのことをいつも心にかけて
いました。
「かな、かな」
校長先生は、自分のこどものように、かなをかわ
いがっています。
先生の奥さんも同じでした。


 
三月末。
校長先生は、学校を去っていきました。



校長先生は、こどもたちから「ひげの校長先生」
とよばれ、したわれていました。
こどもたちはみんな校長先生が大好きでした。
こどもたちは、校長先生と別れるのがつらく、
「校長せんせい、これからも時々学校へ遊びにき
てね」と、約束しました。



「校長先生との別れ」は、みほようこの三冊目の
童話・「ふしぎな鈴」のつづきとして書きました。



「ふしぎな鈴」は、昨年九月、
http://www.choeisha.com/
から、発行されました。



ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)

ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)