黄金色のまゆ玉2


昨日につづき、童話「黄金色のまゆ玉」
を紹介します。


  
   黄金色のまゆ玉2


「おお、寒いっ」
明神さまは、空をみあげみぶるいしま
した。そして、なにやら小声でつぶやく
と、足早に歩き始めました。
その歩きかたの早いことといったら。
青年たちは、こんなに早く歩く人をみた
ことがありません。



青年たちは、たちまち明神さまの姿を見
失ってしまいました。
「明神さまって、足が早いんだね。まる
で、氷の上をすべるように歩いていったよ」
「それにしても、明神さまはどこへ行っ
たのだろう」
「好きな人のところへ行ったのかもしれ
ないよ」
「ばかをいえ。あんな美しい奥さんがいる
のに、明神さまがそんなことをするはずが
ないじゃないか」



「じょうだんだよ。じょうだん。なにしろ
あの二人は、うらやましいほど仲がいいか
らね」
「じゃあ、明神さまはどこへ行ったのだろう」
「明日の夜は、なんとしても明神さまの行
き先をつきとめようぜ」
青年たちは、何日も明神さまのあとをつけ
ました。しかし、いつも明神さまの姿を見
失ってしまいました。



二月初めのある夜のことでした。
青年たちは、今夜も明神さまの後をつけてい
ました。
湖の真ん中あたりまできた時、「ばりばりっ」
「みしっ」という大きな音がして、氷がわれ
はじめました。
「わぁー!!気をつけないと、湖へ落ちるぞ」
青年たちは、おもわず後ずさりしました。
そうしている間に、その夜も明神さまをみう
しなってしまいました。



「今夜こそ、行く先をつきとめられると思った
のに、残念だったな。それにしても、あぶない
ところだった。こんな寒い夜湖に落ちたら、し
んぞうまひでしんでしまうぞ」
青年たちは、とぼとぼと家に帰りました。
「そうだ、今度は湖の向こう側へ先まわりして
待っていたら、どうだろう」
「おお、そうすれば、うまくいくかもしれないぞ」
青年たちは、湖の向こう側へ先まわりして、明
神さまを待つことにしました。
でも、明神さまの行き先をつきとめることはで
きませんでした。



そんなある日。
「明神さま、この頃奥さんの顔をみかけないけ
れど、奥さんは元気かのぅ」
「ああ。元気じゃよ。妻は用事があって、里へ
帰ったのじゃ」
「それにしては、長いのぅ。奥さんどうかした
のかね」


つづく