童話「女神さまとの約束」


    童話「女神さまとの約束」12


「とうちゃんは、元気でいるかしら?」
「たきたてのあたたかなごはんが食べたいな」
「大好きなりんごも食べたい」
「おいしい魚も食べたいな」
そう思うと、福は急に家に帰りたくなってしま
いました。



秋になり、硫黄岳の木々も、赤や黄色に紅葉し
はじめました。
そんなある日。
「白駒、おねがい。私を家につれていって」
「福さん。女神さまとの約束を、忘れたのですか。
女神さまとの約束をやぶると、大変なことになり
ますよ」
「大変なことって?」



「女神さまとの約束をやぶると、福さんの命はあ
りません。私は、女神さまとの約束をやぶった何
人もの人を知っています。だから、福さんには、
女神さまとの約束を、さいごまでちゃんと守って
ほしいのです」



「私は、女神さまとの約束を守り、険しいこの岩
場に残りました。そして、何千人もの病人をすく
いました。とうちゃんに会いたくても、私はじっ
とがまんしました。ねぇ、白駒。三日くらい家に
帰っても、だいじょうぶでしょ?すぐここにもど
るから・・・。ねぇ、白駒。おねがい。私を家に
つれていって。どうしても、とうちゃんに会いた
いの」
福は、ひっしで白駒にお願いしました。


    つづく