きよと清太と、そして白駒


   きよと清太と、そして白駒35


第三章 きよと清太と長者。
     それぞれの思い

      
八月のある日。
「きよ、ちょっと」
「とうちゃん。何?」
「きよは、いとこの次郎のことを、ど
う思っているんだい」
「次郎さんは、やさしい人だわ。でも、
私は、次郎さんと結婚する気はありま
せん」
きよは、きっぱりいいました。



「なぜ?」
「私、人のいうままになっている次郎
さんを、どうしても好きになれないの。
それに、次郎さんは、なんだかたより
ないし・・・」
「たしかに、次郎には、そういうとこ
ろがある。わが家の仕事は、大変だ。



村の人たちの相談にものってあげなく
てはならないし、みんなの先頭にたっ
て、いろいろやっていかなくてはなら
ないからね」
結婚とは、難しいものだと、長者は思
いました。 


               つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう美しい湖があります。
その湖には、「白駒の池」という悲し
い伝説があります。



「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。