火とぼし山


   火とぼし山69


「きよ。火がどうしたのじゃ」
「火が南にともっていたの」
「何、火が南にともっていたと。
きよ、それは、ほんとか」



「はい。火が、いつもより南にと
もっていました。
泳ぐ方向を変えようと思ったとた
ん、うずにまきこまれてしまいま
した」



「そうか。やっぱりそうだったのか」
「やっぱりって、どういうこと」
「次郎は、わざと別の場所で火を
たいたのじゃ」
「わざと?」
「そう。次郎は、いつもとちがう
場所で、火をたいたのじゃ」


           つづく



「おみわたり」で有名な信州の諏訪
湖には、「火とぼし山」という悲し
い伝説があります。



「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。