赤い夕顔の花が咲いた


 赤い夕顔の花が咲いた20


後をふりかえると、城がめらめら
と燃えています。
「城が燃えている。さっきまで住
んでいた城が燃えている」
盛永が、うわごとのようにいいま
した。



「あの城は、領民たちの年貢で建
てた城。その城が、燃えている。
城は、わしのものだとばかり思っ
ていた。



でも、よく考えてみれば、城は領
民たちのものだったのだ。
あの城は、領民たち一人一人の汗
の結晶だったのだ。



わしは、この五年間、三つの城を
つくることに夢中で、そんなこと
にも気がつかなかった。
城主になってから、領民のことな
ど一度も考えたことがなかった。


            つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の最南
端にあった「権現城」に伝わって
いる話をヒントにして、みほようこ
が書いたもの。