赤い夕顔の花が咲いた


 赤い夕顔の花が咲いた44


「みかけない顔じゃが、どなたじゃ」
「私は・・・」
「奥がたさま。名前をなのっては
いけません」
そうべえが、小声でいいました。



「何、この人が、奥がただと。
どこの奥がたじゃ。こんなうす汚
いかっこうをして、奥がただなん
て聞いてあきれる。



わしでさえ、そんな汚いかっこう
はせんわ。奥がただなどと、たわ
けたことをいうものではない」
おばあさんがはきすてるようにい
いました。



「私は、権現城の城主・盛永の奥
がた、お万でございます。
昨夜、下条の夜討ちにあい、浪合
の実家へ帰る途中です。
ことわりもなく、夕顔の花をとっ
たこと、どうかお許しくださいませ」
再び、お万は、おばあさんにわび
ました。


            つづく



   昨日の分は、こちら。


   赤い夕顔の花が咲いた43


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20080917#p1




初めてこの物語を読んでくださった
 かたへ


     赤い夕顔の花が咲いた1


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20080805#p1



「次の日」「次の日」と押せば、
「赤い夕顔の花が咲いた」を続け
て読むことができます。



「赤い夕顔の花が咲いた」は、
信州の最南端にあった「権現城」
に伝わっている話をヒントにして、
みほようこが書いたもの。